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奥歯の想い

くやしかった

ギリッって音をたてそうなくらい 僕は奥歯を強く噛んでいた

いっそ音をたてて それが向かい合った相手の耳に届けばいい って思った。




僕は今後の我蘭堂のため 新規で取り引きをする為の申請を出しに とある施設の中にある「東京都の事務所」の中に立っていた
仲介してくれた 某会社の担当の方がわざわざ その事務所まで僕を案内してくれたのだった

本籍地の「身分証明書」をはじめ、一週間以上かかってやっと揃えた分厚い申請書類一式を抱えてやってきた僕に 都の職員さんの開口一番に出た言葉は

「ここに書いてある『担当者に連絡を入れてから来てください』 っていうの読みませんでしたぁ?」 だった。

アポなしで来た訳じゃなかった僕は 仲介してくれた会社に連絡をいれてあった旨をその職員さんに告げると

「それはウチとはゼンゼン関係ないことですからね!」 と叱られた、そう叱られるテンションだった。
「私が今 居なかったら 帰ってもらう事になっていたところですからね!」 とまくし立てられた。
僕は決して 都の事務所に申し送りをしてくれなかった仲介の会社に不満を感じたのではない

僕は思ったのだ
いま、貴方はこうしてここに居るじゃないか たしかに今、貴方は忙しかったのかもしれない、それでもアポなしで来て断わられるのは僕のほうじゃないか
どうして そんな言葉を選ぶのだろう。

仕方ないから面接をする っていうムードのまま その担当者は奥のソファーを指差し 持ってきた書類を順番どおり並べておくよう促された。

僕は一人ソファーに座り、言われたとおり 書類を並べた頃 担当者は自分の席から大声で
「お宅は 法人? 個人?」 と訊ねてきた。
僕が 個人だと伝えると 

「個人の申請者は こっちの順番でならべてっ、その順番は法人用だから」 といわれ 僕は書類を一から並べ代えさせられた。

僕は 反則金を納めに来たわけでも 始末書を出しに来たわけでもない ここでこれから仕入れをするという手続きをしに来ただけだ
文章では伝わりにくいけど 非常に屈辱的な扱いに感じた

20代までの僕だったら どうしていただろう  いちいち声を荒げて揉め事を作るタイプではなかったけど
きっと書類をまとめて 「出直すから」って席を立ったことだろう

でももうそんな青臭いことをしても誰も褒めてくれない、そしてなによりも ここで仕入れをする事が 今後の我蘭堂にとって必要だと決心したのだから 今日の目的はこの書類を受理してもらうことなのだ
見失っちゃいけないことなのだ。

そう思うと 我慢できた。

その担当者が 僕のところにやってきて 僕は名刺を出して改めて挨拶をした 

その後、彼は書類をフンフンと眺め始めた
「身分証明書(本籍地の役所でのみ発行)は無いんですか?」
僕は絶対に不備がない自信があったので 
「並んでないですか?  これじゃないですか?」 と切り返した

この人は 何の為に 書類を順番どおり並べるよう命じたのだろう

僕はここでも 我慢するしかなかった  でもそれが必要なら それは僕のキャパ内だった


そして僕は決定的な事を告げられる 

「今までの仕入れ実績、年間〇〇〇〇万円以上が必要なのは聞いてます?」
その数字は 我蘭堂の一年半分の仕入れ量で生まれるような数字だった。

「いいえ、聞いてません」 と僕。

「うちの施設内で年間〇〇〇〇万円以上仕入れをしているってのが条件で、これはうちも譲れないんだよね・・
あと少しでその数字に届くんだけど・・・っていう申請者、何人も帰ってもらっているんだよねぇ」

ちょっと我慢の限界だったんだけど ここは食い下がろうと思い
「じゃあ 新規の花屋で買参権を取ろうって人は どうするんですか?そんな人は居ないんですか?」
と 言うと

「はい、そんな人は居ません」



あぁ そうか この人は 僕の事を 「そんな人」だと思っていたのだ
「そんな人」は たいがい アポもなしでやって来て 自分の仕事のペースを乱し 数字も足りないのに大手と取り引きしたがるような花屋だと 思っているのだ。


その後 なぜかすこし 態度を軟化させた その担当者は 僕に
「仲介してくれた業者さんに相談して 数字を枠内に届くように相談したらどうですか」 といった。
そして数ヶ月後に また申請すれば良い 書類の日付はそのままでいいから・・・ とも。
その時は 私の所に来るように、といって 僕が持ってきた書類の束の一番上の書類に エンピツで自分の名前を書いた。
とうとう 向こうから名刺が出てくることは無かった。

僕は この瞬間、今後を決めかねていたので 蹴破って出て行きたい気持ちを抑えて その走り書きを眺めていた。

いまの時点で 我蘭堂に 年間〇〇〇〇万円の仕入れは不可能だろう
僕は ただひとこと
「残念です」  と言った
奥歯が離れてくれず クチビルだけでしゃべった言葉だった。


結局受理してもらえなかった書類を抱え 振り返りもせず事務所をでて駐車場にむかう 
敗北感でいっぱいだった

外来者用の駐車場の場所が良く分からなかった僕が ここならいいだろうと思って停めた自分の車の場所に着くと 僕の車のフロントガラスにメモが挟んであった
「車の移動をお願いします 株式会社〇〇〇ー〇」 

なんだか コテンパンに負けた気がした。

20代の僕が 今日の僕を見たら どう思っただろう?
担当者に取り入ってもらおうと必死になっている様は 腰抜けになった ただの四十路男だと 軽蔑したかもしれない

くやしくて 胃の中がポッと熱い
だけど こんな事久しく無かった気がする

花屋を始めたばっかりのときは こんなふうに奥歯を噛んだり 胃の中が熱くなったりして ひどい時はそのまま悔しさで吐いたりしたこともあった。

四十五歳目前になったおっさんの僕は さすがに吐いてしまうほどの繊細さは なくなっちゃったけど
こんなふうに感じることは貴重なことかもしれない

きっと人に対する接し方のケーススタディが増えたに違いない


ちょっとくやしいけど 「沢山仕入れて沢山売る」ってことに照準を合わせていない我蘭堂は あの担当者を見返す数字をあげることに執着するわけにはいかない

ただひたすらに 満足の仕事が出来るように 
「悩んで 選んで 進んで ぶつかって また 悩んで 選んで 進んで ぶつかって」 を
繰り返していくだけ

そう 

決めたのだから。
by garland1992 | 2010-12-03 17:07 | Comments(8)
Commented by 寅さん at 2010-12-04 00:12 x
40過ぎた俺はさすがにこれを読んだ時・・・
殺す!だったな~
俺が酒の仕入れとかでそんな態度とられたら
暴れて椅子蹴り飛ばして帰ってくるだろうな・・・

俺はそんな大人じゃないからという以前の問題。

人間としてそんな所との取り引きは意地でもしない

対 人との付合いだと思うから・・・。
ゴメンね生意気言って・・・。
Commented at 2010-12-04 19:15 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2010-12-04 20:51
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2010-12-05 01:00 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by garland1992 at 2010-12-05 09:31
>寅さん
返事遅れてごめんね。
まぁこれが民間の会社だったらありえない対応だし、おれもその会社と付き合うつもりはまったく無くなるよね、っていうかあんなに我慢しないし(笑)
今回の担当者は都の職員で、今後仕入れる直接の相手とは違うわけよ
だから、極端にいうと「土下座すれば買参権を出す」っていうなら オレは土下座する覚悟だったわけよ、まぁありえないけど(笑)
土下座することで逆にプライドは守れるっていうかさ。

だけど 覚悟だけじゃダメだったのが悔しくてね・・・
ヨ〇オ、ありがとね 気が済んだよ(笑)
Commented by garland1992 at 2010-12-05 09:37
>非公開コメ さ殿 ←(バレバレだっての)
やっぱ指揮してるんですね・・・・・裏部隊を(笑) ホンとっぽいから頼りにしてます。
たまにはコテンパンも良いもんっすね・・・・胃液がふえて←(いいのか?)
さ殿、ありがとうです、うれしかったっす。
Commented by garland1992 at 2010-12-05 09:50
>非公開コメはなSさん
なんだかお手数をかけてしまいましたね、ごめんなさい。
内容が内容だからねぇ・・・ははっ。
かけだし花屋の頃を思い出させるような出来事でした
うそじゃなくって、いまはちょっと あの感じを思い出させてくれたなぁって(笑)

いつどこで 今向かい合ってる相手が自分のお客様になるか分からないから 我々は気をつけなきゃいけない訳ですけど それは販売業に限ったことじゃないですよね。
誰に対しても「たいら」で居たいもんですね。
はなSさん、ありがとう、コメうれしかったです。
Commented by garland1992 at 2010-12-05 09:57
>非公開コメいち殿 ←(だからバレバレだっての)
最後の一行、心に響いたよ
分かり合える親友がいるってのは こんなにも強くなれるんだなぁ・・・
でもほんと 忘れてた感覚がよみがえったようでいい経験だったよ 
あれをいい経験にすれば それは 俺の勝ちってことだっ、きっとそうだっ。

共に悔しい って言葉、ずっと忘れないよ・・・涙出た。
ありがとう、うれしいよ。